「トレイひとつで遊びが変わる!」センサリープレイの新常識
- sanastitch
- 3月12日
- 読了時間: 6分
こんにちは。一般社団法人センサリープレイ協会理事のさぴぴです。
「センサリープレイにトレイって必要?」
素材や感覚ベースが散らかる…片付けが大変…そんな悩みを解決するのがトレイの活用です。実は、トレイを使うことで、子どもの集中力や創造力までアップします。この記事では、トレイの選び方からセンサリープレイの遊び方、発達への影響まで詳しく解説します。
「トレイはどのようなものを使用すればよいですか?」というご質問をよくいただきますが、トレイそのものが重要なのではなく、子どもたちがどのようにトレイを活用してセンサリープレイを楽しむかという点が一番重要です。

基本的に、トレイはどんなものでも使用できます。特定のトレイでなければならないという決まりはありません。ただし、センサリープレイ初心者の方に適したトレイはいくつかの条件があるため、そのポイントについてもお伝えします。
1、センサリープレイ初心者におすすめのトレイ
センサリープレイを始める方は、以下のポイントを参考にトレイを選んでみてください。
プラスチック製(汚れてもすぐに洗い落とせる)
水に強い素材(水遊びにも対応できる)
縁が高く、中に入れた素材や感覚ベースがこぼれにくい
頑丈な作りで、長く使える
※ 使用する人数に応じて、適切なサイズを選びましょう。
ただし、トレイがなくても身近なもので代用することができます。
使わなくなったお弁当箱(大きめ)
収納ケースのフタ
大きめのお皿や植木鉢の受け皿など

2、トレイを使用するメリット
▪️遊びのスペースを整理できる
素材が広がりすぎず、片付けが簡単になる
1つのトレイごとに異なる感覚ベースを設定できる(例:「水専用」「砂専用」など)
▪️感覚体験を豊かにする
五感を刺激する素材を組み合わせやすい(お米、お豆など)
トレイごとに異なる感触を楽しめるため、比較や分類の力も育つ
▪️ 遊びの集中力がアップする
「トレイの中で遊ぶ」というルールがあることで、子どもが環境に集中しやすくなる
「お豆の仕分け」「ボールすくい」など、細かい作業もやりやすい
▪️多様な素材に対応・水、砂、泥、お米、豆、シェービングフォームなど、さまざまな素材を使ったアクティビティに活用できる
おすすめの素材:・お米やお豆・小麦粉や寒天・砂や土・シェービングフォーム・氷や水・絵の具や粘土・ハンドソープの泡 など

3、トレイの中でどんな遊びができるか
▪️科学実験のセンサリープレイ
水と氷の性質の違いを楽しむ
重曹とクエン酸と水を混ぜて発泡反応を観察する
水に浮かぶもの、浮かばないものの違いを楽しむ
片栗粉と水を合わせたダイラタンシー現象を楽しむ
▪️小さな世界あそび(スモールワールドプレイ)
小さなフィギュアや自然素材を使って、子どもたちが自分たちの物語を作って楽しむ遊び。・テーマ「森」 → 小石、枝、葉っぱ、動物のフィギュアを配置・テーマ「牧場」 → 草や葉っぱ、泥、牧場の生き物のおもちゃを活用・テーマ「海」→貝殻、人工水草、海の生き物フィギュアを配置子どもたちが自由に想像を膨らませられる環境を作ることで、物語を通じた創造力が育まれます。小さな世界あそびについてはこちらの記事も合わせてお読みください。
▪️算数の遊び
トレイの中で、子どもたちが 「数える」「比べる」「分類する」 などの数学的思考を楽しく学べるセンサリープレイ
宝探しセンサリープレイ(砂やお米の中に 数字のカードやブロックを埋めて探し出す)
カラフルボールすくい(トレイに水とたくさんのボールを入れてすくう)
お豆の仕分けあそび(様々な種類のお豆をトレイに入れて種類ごとに分ける)

4、子どもの発達に与える影響
センサリープレイにおけるトレイの活用は、単に遊びを整理するだけでなく、子どもの発達にも大きな影響を与えます。 最新の発達研究や心理学的視点から、そのメリットを詳しくお伝えします。
1. 空間認識力の向上(ピアジェの発達段階論)
トレイの中で素材を動かしたり、何かを並べたりすることで、空間認識力(ものの位置やバランスを理解する力)が育ちます。研究によると、幼児期における立体構造の認識や空間配置の理解は、数学的思考の発達に影響を与えることが分かっています(参考文献: 中垣啓 (2013). ピアジェ発達段階論の意義と射程. 発達心理学研究)トレイの中で「どこに置けば安定するか?」「並べたらどう見えるか?」と考える遊びは、将来的な算数の概念につながります。
2. 自己調整能力の発達(エグゼクティブ・ファンクション理論)
トレイの中で遊ぶことは、子どもが自分で環境をコントロールする体験につながります。心理学の研究によると、子どもが自ら環境を整え、秩序を持って遊ぶことは、自己調整能力を向上させることが明らかになっています(参考文献: Diamond, A. (2013). Executive functions. Annual Review of Psychology,)
▪️自己調整能力とは、・計画を立てる力(どの素材をどこに置くか考える)・衝動を抑える力(遊びの順番を守る、適切に使う)・状況に応じて行動を変える力(遊び方を工夫する、変更する)
こうした力を指し、これらは将来的な学習能力や社会性の基盤となると言われています。例えば、「豆をスプーンですくって移す遊び」では、適切な量をすくう調整力が必要になります。「お豆の仕分け遊び」では、ルールを決めて整理する力が育ちます。こうした活動を繰り返すことで、子どもは遊びの中で自己調整能力を高めていくのです。
その他にも、トレイを使った積み木遊びでは、「高く積むにはどうすればいいか」「バランスを取るには?」など、自然と試行錯誤する力が養われます。
3. 感覚統合の発達(Ayresの研究)
センサリープレイは、五感を刺激する遊びです。
トレイを活用することで、より効果的に触覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚を使った体験が可能になります。例えば、触覚の発達に関する研究(参考文献:Ayres, A. J. (1972). Sensory Integration and Learning Disorders. Los Angeles: Western Psychological Services.)では、子どもが異なる感触を体験することが、感覚統合の発達を促し、運動や認知能力の向上につながることが示されています。
▪️トレイの中に水・砂・豆・粘土などさまざまな素材を入れることで「冷たい」「サラサラ」「しっとり」「ザラザラ」などの触覚体験 ができる・色や形の違いを比べることで視覚的な識別能力が育つ・すくう、移す、混ぜる動作を通じて、手の巧緻性(細かい動きの調整力)が向上するこうした経験は、子どもが環境を理解し、適応する力を養うのに役立ちます。
トレイひとつで、センサリープレイがこんなに変わる!センサリープレイにトレイを活用することで、子どもたちは 「創造力」「集中力」「感覚の発達」 を自然に伸ばすことができます。さあ、今日から身近なもの(トレイ)を活用して、センサリープレイを始めてみませんか?
© 2025 一般社団法人センサリープレイ協会. All rights reserved. 当記事のコンテンツ(文章・画像等)の無断転載・転用を禁止します。